2度の八丈島取材で感じたこと

2度の八丈島取材で感じたこと



普段から足繁く通うあのスポット。年に数度楽しみに通う特別なあの場所。日頃から釣りが好きな人なら、そんな自分だけのお気に入りフィールドが1つや2つあると思います。ある日突然、もっと言えばひと晩を境に、そんな大切な場所がガラリと変貌してしまったら。

2025年10月、まず台風22号「ハーロン」が猛烈なパワーを維持したまま八丈島を襲い、そのわずか数日後には23号「ナクリー」が追い打ちをかけるように上陸した。立て続けに島を襲った二つの猛烈な台風による住宅被害は島全体のおよそ5分の1にあたる900件を超え、断水は約4100軒、ほぼ全世帯に及ぶ甚大な被害状況となったという。
ニュースで一連の報道を目にしながら、僕らBYWUの頭にあったのは、これまで何度も通ってきたあの島の景色だった。いつも僕らを迎えてくれる海、案内してくれる現地の人たち、そのすべてが今どうなっているのか。いてもたってもいられず、11月僕らは八丈島へ向かった。

飛行機を降りた瞬間から、いつもとは違う空気を感じた。空港から近いエリアを中心に車で島を回ってみると、目に入るのは屋根が吹き飛んだ住宅、道路に倒れ込んだままの街路樹。そして漁港や海岸線には、いつも以上に大量のゴミが漂着していた。せっかく訪れたのだからと、島の人たちと一緒にゴミ拾いのボランティアにも参加させてもらった。カメラを持つ手を止めて、島の人たちと同じ目線でゴミ袋を抱えていると、見えてくるものが違った。

なかでも衝撃を受けたのは、島の南東側にある旧・末吉小学校の校舎を利用した「八丈島の海・山・暮らし館」周辺の被害で、大規模な崖崩れにより、そこから先は車が一台も入れない状態になっていた。住宅や道路の被害はもちろんのこと、畑のビニールハウスなど農作物への被害も深刻で、さらに長引く停電によって、貯蔵庫に保管されていた多くの食料品や商品を廃棄せざるを得なかったという話も聞いた。日常生活はもちろん、仕事の面でも、台風前の暮らしに戻るまでにはかなりの時間がかかりそうだと、その場に立って感じた。

今回いつも僕らがお世話になっている、アカハタという釣り宿を営む久保田さんにも改めて話を聞いた。ずっと八丈島で暮らし、台風には慣れているはずの久保田さんが、「毎年台風はくるけど今回の二つは桁違いの規模だった。正直、恐怖を感じたよ」と話してくれた言葉が印象に残った。宿があるエリアは比較的早くライフラインが復旧したため、一時は避難所として被災した地元の方に宿を開放していたそうだ。ただ、窓ガラスが割れて部屋の中まで破片が飛び散っていたため、みんな室内でも靴を履いたまま過ごしていたという。復旧に時間がかかっている理由として久保田さんが挙げていたのが、本土から業者や職人がなかなか島に来られないということ。11月の時点で「復旧の目処が立つのは、26年の夏ギリギリになりそうだ」とも話していた。

その言葉を聞いて、まず正直に感じたのは、当たり前だが自然災害からの復興にはこれほど長く、気が遠くなるような時間がかかるということだった。テレビやニュースで報道されなくなった後も、島の人たちにとって復興への道のりは果てしなく長く続く。それでも、日々の生活は続けていかなければいけないし、立ち止まることもできない。少し想像すればわかりそうなものだが、やはり現実を前にすると言葉にできない虚無感と焦燥感が交互に襲ってきた。

-それから半年が経ち、2026年6月。僕らは再び八丈島へ向かった。

道路に倒れていた木や、吹き飛ばされた屋根など、目に見える部分は少しずつ復興が進んでいるようにも感じた。崖崩れで封鎖されていたあの道も、崩れた爪痕こそ残っていたものの、道自体はつながり、車で島を一周できるまでにはなっていた。

一方で、仕事や観光の面では、まだまだ被災前の水準には戻っていないという印象も受けた。観光客は少しずつ戻ってきてはいるものの、島民の中には、大きな被害を受けたことをきっかけに島での暮らしを断念して、移住することを選んだ人もいるという。道路や屋根といった目に見える傷跡は少しずつ消えていっても、そこで生活し、仕事をしてきた人たちの暮らしや心の中にある傷は、簡単には消えないのだと思い知らされた。僕らにできることはあまりに少ないと感じる場面も正直あったが、それでも、来て、見て、直接話しを聞くことでしか分からないこともあると、改めて感じられた。

八丈島の自然は、いつも優しいわけじゃない。海に囲まれている分、台風をはじめ天候の影響は本土よりもずっとダイレクトに、そして容赦なく牙を剥いて襲いかかってくる。だけどその一方で、そんな剥き出しの自然と向き合えることこそが、八丈島の魅力でもあると、今回改めて感じた。他の釣り場では決して味わえないダイナミックさ、楽しさ、開放感、雄大な景色や満点の星空など奥深い自然の魅力、そして時にはっきりとした恐怖心。この土地を実際に訪れて、身体で感じないと出会えない、かけがえのない瞬間がこの島にはいくつもある。

6月の再訪では船を出してもらい沖合へと釣りにも出た。あいにく当日は雨風が強く、海はかなり時化ていて正直あまり期待はしていなかったが、それでも実際に竿を出してみるとソウダガツオにキハダマグロ、根魚系までが次々にヒットし、初めて船釣りに挑戦するメンバーも含め時化の中でもみんなしっかり釣果を持ち帰ることができた。本来のシーズンにはまだ少し早い時期だったにもかかわらずこの釣果で、やはり八丈島の釣りのポテンシャルは相変わらず底知れないなと。なにより、竿を通して伝わってくる魚の引きは以前と変わらず力強かったのが、なんとも感慨深い気持ちにさせられた。

僕らはこれまで、日本中いろんな場所を旅して、釣りを楽しんできた。今回の取材を経てふと思うことは、その土地土地の素晴らしい環境を維持してくれているのは、いつだってそこに暮らすローカルの人たちだということだ。彼らがいなければ、僕らが当たり前のように楽しませてもらっている釣り場の景色も環境も、いつか変わってしまうかもしれない。どんな場所であっても、そこで日々の暮らしを営んでいる人たちがいるということを忘れず、その場所と、そこに生きる人たちに敬意を持つこと。アウトドアの世界には「Leave No Trace / 足跡を残さない」という環境倫理の考え方があるが、ただでさえマナー面がなにかと取り沙汰される釣り人だからこそ、僕らBYWUはこの考え方を大切にしていきたい。そして微力ではあるけれど自然やフィールドで遊ばせてもらっている僕らだからこそできることを、一つひとつ形にしていきたい。今回の八丈島での時間を通して、そのことを改めて再認識した。

今回の取材と並行して、僕らはこの八丈島でのドキュメンタリームービーも制作した。文章だけでは伝えきれない、島の空気や人の表情、荒れた海の音まで、ぜひ映像でも感じてもらえたら嬉しいです。

八丈島の海は、これからも初心者からエキスパートまであらゆる釣り人を魅了し続ける。そして、その環境を守り続けてくれているのはいつだって島の人たちだ。そのことを忘れずに僕らはまた、この大好きな島を訪れたい。


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